2024.01.05
耐震性能(3)
さて。引き続き耐震性能のお話。
前々回のコラムで明示したように、熊本地震では圧倒的に「耐震等級3」の建物の被害が少ない結果となっています。
倒壊、全壊、大規模半壊までが「0」。半壊や一部損壊が「2」。無被害が「14」。
「耐震等級1」だと、大地震がきたあと、そのまま建物を使用していくことが不可能とすると、やはりそのあとの損害(精神的、金額的な負担)はかなりのものになります。
ならば、やはり「耐震等級3」を基本的には基準としたいところです。
無論、特殊な形状などで他の理由があって、どうしても「耐震等級2」どまりのような事例もあるかもしれませんが、だいたいのプランで耐震等級3は取得できるとは思います。
※構造を無視したプランは、そもそも建物としてどうかとも思いますし。特殊な形状にするために許容応力度計算をするというわけでもありません。
では、耐震等級3とはどういう基準なのか、というところですが、
「耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられるだけの性能・耐震強度水準」ということになります。
【ホームズ君 構造EX の外力設定画面】
構造計算するにあたって外力の設定をするのですが、ここで、「地震力を割り増す」ことになります。
【ホームズ君 構造EX の外力設定画面 ※左下に注目】
「地震力割増」というところが「1.5」になってますね。
これで、耐震等級3に当たる計算になります。つまり、建物にかかる地震力を建築基準法レベルから1.5倍する。
世の中には、「耐震等級3’相当’」なる謎の表現をしているものもたまに見かけます。
これが、「耐震等級3にあたる地震力割増によって構造計算をしているが、性能表示や長期使用構造の認定を取っていない」から’相当’としているなら話は別ですが、「単純に耐力壁の量を1.5倍以上にしているから、耐震等級3’相当’です。」は「NG」です。
壁量を増やすのではなく、そもそも建物にかかる地震力を割り増しして設計する、ということなので、意味合いが全く違います。ここは注意したいところ。
今回「許容応力度計算」においての耐震等級3についての説明をしていますが、「品確法」による耐震等級3、というものもあります。こちらについては詳しく言及はしませんが、許容応力度計算によって耐震等級を取得する方がより安全性が高いです。
ちなみに、構造計算書は一般的な住宅でもかなりのページ数です。直近で申請した物件は、385ページになりました。A4の紙が一発の印刷でほとんど持っていかれます。。泣
実際、構造計算自体は申請含めるとまあまあ大変ですが、建物の構造的には過大な費用増にはならない、というのが私の肌感覚です。ならばやはり「耐震等級3」を目指した方がいいでしょう。
長期優良住宅を取得する場合は、「長期使用構造等である旨の確認書」を認定確認検査機関で取得することになる可能性が高いですが、
こんな書類が発行されます。
下部に「耐震等級3」が明示されていますね。
耐震等級3を第三者機関にて証明してもらえれば、地震保険の割引率がドンと上がるはずですので、長期的に見れば構造の費用増はあってないようなものになるかもしれません。
ご自身で住み続けるにせよ、賃貸や売却などを考えるにせよ、「耐震等級3」はメリットです。家づくりにおいては認識しておきたいですね。