2024.01.04
耐震性能(2)
「耐震等級3」について言及する前に、構造計算方法について整理しておきます。
※耐震等級とは別です。
現在、一般的な住宅の規模だと、「構造計算」が義務ではありません。「壁量計算」なるものを行えば、前述のコラムで言うところの「4号特例」の住宅だとOKとなります。
「壁量計算」は主に「四分割法」という方法で壁を設置する方法です。
下の画像のように、建物の外周部に、必要な壁量が確保されているかの確認をします。
- 【壁量計算(四分割法)の様子】
※グレーの部分が、1階2階それぞれのX方向、Y方向の外周部1/4部分。
ここに必要な量の耐力壁を設置して、その量とバランスを確認する。
※必要な壁量は、建物の立面の大きさ等により、風圧力・地震力等で計算して求める。
1階、2階とも、「平面的に」耐力壁の量、位置を確認していくことになります。
これで法的にはOKなのですが、「上の階からどれだけの力が下の階に伝わっていく」のか等、建物の力の流れを確認することはありません。ただ、「バランス良く、必要な壁が入っているかどうか」の検討です。スパンがどれだけとんでいるか、上下階の耐力壁の位置関係はどうなっているか等、立体的な構成はまったく関係ありません。(必要な壁量については立面から算出することにはなっていますが。)
では「構造計算」は?
一般的な住宅の規模だと、構造計算するとなると、「許容応力度計算」なるものが採用されると思います。
この場合、住宅の構造躯体の各部位がどこからの力を負担して、その力に耐えられるようになっているかどうかを確認していくことになります。
- 【構造計算(許容応力度計算)の様子】
※構造計算のソフト ホームズ君構造EXより。
色が変わっている部分が、指定した梁の負担する部分。力の流れが確認できる。
画像のように、部材毎にかかる力を確認して、曲げ・せん断・たわみ等の検定をして、それに耐えられるような部材断面寸法にしていきます。
この計算方法でも、現状壁量計算は行うことにはなります。(法改正後はどうなるんでしょうね。)
要するに、平面的な耐力壁の検討も含め、「立体的で具体的な安全性の確認」を行います。
うちでも昨年から、ホームズ君を利用した構造計算(許容応力度計算)に切り替えました。
以前は複雑な形状や部位などは構造設計事務所に依頼して確認して設計していましたが、今後は構造計算した上で「耐震等級3」をしっかり確保するため切り替えています。
と、ここまで書いてきたように、圧倒的に構造計算をした方が安全です。
最初はけっこう大変だったので「構造計算のソフトを会社で買ってもらったけど、これ使い切れるか、、、」と戦々恐々でしたが、いまやちょっと楽しいです。基本設計の早い段階でプランの構造的な整合性などの確認もできますしね。
先日は自社での構造計算で初めて長期優良住宅の耐震等級3の申請も出来ました。
色々と修正して大変でしたが。。
個人的に構造計算を行うメリットの一つは、「適切な基礎設計ができる」ことだと思っています。
基礎設計についても、「構造計算をしない」場合、瑕疵保険等の基準のスパン表等を活用して、平面的に決めていくことが主だと思いますが、実際に基礎のどこにどう力がかかるか、は構造計算しないとわかりません。
- 【構造計算(許容応力度計算)で基礎梁の曲げやせん断を確認している様子】
※構造計算のソフト ホームズ君構造EXより。
赤の曲線が大きいところに大きな曲げモーメントがかかるため、基礎梁の断面を大きくしたり、配筋量が増えたりとなる。
太陽光パネルを載せれば重量が増えたり、建物の重心が動いたりもしますし、実態をしっかり確認して設計することが今後はより必要になると思います。
画像でみると違いが一目瞭然ですね。。
と、また長くなってしまったので、ここまで。
耐震等級3の話にはたどり着かず。