2024.02.26
長期優良住宅
最近、うちでもほぼ標準くらいになってきている「長期優良住宅」。
平成21年6月から始まった制度。けっこう昔。。令和4年10月からは既存住宅に対しての認定も開始されています。
そもそもこの制度なんなんでしょうということで。
国土交通省によると、長期優良住宅とは、
「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅です。」
という定義。(国土交通省HPより)
具体的には(一戸建ての住宅の場合)、
- ・劣化対策(劣化対策等級(構造躯体等)等級3 かつ構造の種類に応じた基準)
- ・耐震性(等級2(階数が2以下の木造建築物等で壁量計算による場合にあっては等級3)、等級1でも要件により可)
- ・省エネルギー性(断熱等性能等級 等級5 かつ 一次エネルギー消費量等級 等級6)
- ・維持管理、更新の容易性(維持管理対策等級 等級3)
- ・居住環境
- ・住戸面積(75㎡以上、少なくとも1の階の床面積が40㎡以上)
- ・維持保全計画
- ・災害配慮
などなどの基準が要求されます。
実際に現場でちょっと面倒なのは、床下空間の高さの確保や排水管等の基礎貫通部の更新性の担保ですね。。
- 床段差(床下スペース)
例えば、ダウンリビングや和室の床を下げるなどの場合、審査機関によっては認めてくれません。
こんな感じの断面で、床が通常のレベルから下がると床下の空間がなくなって、点検が出来なくなる。。なので、認めん。ということも多い。。
これはうちの「小川の家」奥の和室は床が下がっています。ここは長期優良ではないのでおかまいなし。
現在施工中の「千波の家」でもリビングが床下げになってはいますが、こちらは長期優良住宅の認定は取れています。申請先を変えたり、色々調整するとできたりする。ただし、設計者にそれなりの熱意がないとなかなかうまくいかないかもしれませんね。
- 配管
あとは、配管。。
写真の下の方にポコポコ配管が出てますね。これは配管の基礎貫通キット。この中に配管を通すことで、将来配管の更新(交換)の際に、基礎自体をいじらなくてよくなる。
そうなんですよ、将来的には別にいいことなんですが、結局この貫通キット自体が配管よりも大きいもんだから、逆に配筋とのかぶり厚さが取りにくい。。毎回配筋後の配管時に配管と配筋で格闘です。補強が必ずといっていいほど必要。。
他にも色々ありますが、やはり実務的には申請期間が現在長期化しているのがつらいところです。
直近の物件だと、だいたい申請を出してから1か月~1か月半くらいは長期優良住宅の認定まで時間がかかります。。
担当の行政機関に認定申請をしないと着工自体ができないのでつらい。
ただ、これは来年4月の法改正で色々変わるかもしれません。
と、ここまでよくわからない現場のグチのように書いていますが、建て主さんも色々とやらなくてはならないことが待っています。
- 建て主の義務
長期優良住宅は、ただ補助金が出る、減税効果が高い、だけのお得な制度ではありません。
「住宅を長期にわたり良好な状態で使用するためには、建築じにおいて耐久性を確保するとともに、工事完了後に計画的に点検を行い、適切に補修及び改良等を行うことが必要になります。認定を受けられた方は、申請時に作成した維持保全計画に従って計画的に点検を実施し、必要に応じて調査・修繕・改良を行うこと、さらにその内容の記録を作成し保存することが求められます。」
とされています。(国土交通省 長期優良住宅 パンフレットより)
長期優良住宅認定制度の概要について P6より引用
つまり、「良質で価値ある住宅を自分でしっかり管理していく代わりに、税制面や補助金の優遇をしますよ」という制度である、ということを忘れてはいけません。
認定した所管行政庁には、維持保全の状況を抜き打ちで調査する権限もあります。(茨城県だと調査報告依頼書が届くことがあります。)
しっかり点検などしていないと、助言・是正指導、最悪の場合補助金返還などもあり得ます。
「長期優良住宅で建ててもらった」という意識でいるだけではなく、「長期優良住宅で建てたから、その後も自分でしっかり管理していかなくては」という意識が大事です。
例えば、いま現在放置されている空き家で、倒壊しかけているんじゃない。。?というものもたまに目にしますが、自分の土地・建物の話だけでは済みません。道路にでも倒れたら大変です。
自分の家だからといって、管理もせずとも関係ない、と思う考えはすでに古い考えです。街並みの一部であり、独立性を有しながらも公共性も含んでいることも考えていきたいところです。