2024.02.18
床レベル
住宅の内部の床の高さ、床レベルですが、どうやってきまっているのかご存じでしょうか。
「外とあんまり高低差ない方がバリアフリーでいいんじゃない」という感じしますよね。
でも実際に一般的な住宅は、何段かの階段を上がって玄関に入るような構造になっています。
色々と理由があるわけですね。
実務上は、「床レベルをどの高さにするか」ということではなく、「外部の基礎立上りがいくつなのか」というところから床レベルが「決まってくる」ことになることがだいたいだと思います。
建築基準法施行令第38条に基礎について規定されているのですが、その中の第3項に「基礎構造は大臣告示に定めた構造方法」という内容がありまして、さらにその中身を見ていくと、告示を確認していくことになります。
H12建告第1347号のべた基礎のところを見ていきます。
第3項に、ベタ基礎の構造方法が明記してありまして、
(もう法文でいやになってきますね。)
告示第1第3項三号に、「立上り部分の高さは、地上部分で30cm以上・・・」という条文があります。
ということで、外周部の基礎の立上りは、「30cm」以上必要になってきます。
ただし、長期優良住宅(厳密には土台下端寸法指定)やフラット35などでは、水の跳ね返り等々メンテナンス面を考慮して、この寸法が40cm以上になります。
ということで、外周の基礎の立上りの高さを40cm以上として設定することが多いわけですね。
そこに基礎パッキンや土台、床合板と床仕上げ材を積み上げていって、結局床レベルが決まってくる、ということになります。
「GL」という位置が地盤面。この図面だと40cmの基礎の立上りの設定です。
もちろん、これを除外する方法もあります。
告示での条件は、「構造計算による場合は適用しない」ことが可能です。
・・・?基礎って構造計算してないの?・・・一般的にはしてません。。よくわかりませんよね、このお話。なら基礎ってどうやって決めてるんだと。これはまた別のお話で。
専門的なことを言うと、住宅だと「許容応力度計算」というものが用いられますが、この構造計算を行って建物の躯体・基礎の安全性を確かめた場合、外周の基礎立上りの規定(べた基礎)は外れて、30cmの規制はなくなります。
ただし、基礎については色々とありまして、
先ほどの図面に色付けしたもの。このオレンジと緑の部分は通常コンクリートの打設を別に分けて行います。すると、境界部分に微妙に隙間ができることになります。
この部分が、地盤面よりも下がると、ちょっとよろしくはない。水が入ってきてしまったり、シロアリがここから入ってくる可能性が上がってしまったり。
なので、基本、地盤面から5cmくらい上げたところに基礎のコンクリートの打ち継ぎ部分を持ってくるわけですね。そうなると、結果的に、
①地盤面から基礎高さ:40cm
②基礎天端から床仕上げ:16cm
①+②でだいたい56cmくらいとか、そのくらいの床レベルが内部の床の高さになるわけですね。
こんな感じで、玄関の外に階段が2段、みたいなことになります。
基礎の高さの30cmの除外する場合はどんな時かというと、個人的にはやはりバリアフリーです。
こういう具合。上玉里の家です。
基礎の天端から地盤面まで、約10cmにしています。ほとんど基礎の立上りが見えません。
この住宅は、お施主さんがご年配のため、将来的な車椅子での生活も鑑みて家全体の床レベルを地盤面に近づけています。玄関前のスロープもだいぶ緩くできます。(バリアフリー法に則って1/15勾配)
コンクリートの打ち継ぎが地盤の中にもぐってるじゃん。ということになりそうですが、
浮かし枠という方法で、前述のオレンジ部分と緑部分を一緒にコンクリートで一発で打設して対応しています。これで打ち継ぎなし。(施工は大変。。)
そうなると、
こういう低い基礎にできます。
もしバリアフリー、あるいは他の理由により、床レベルを地盤面に近づけたいときはこんな方法も可能です。
※長期優良住宅だとおそらくNGです。
内部の床を基礎の立上りの上に作らずに、別で設ければ割と自由に床レベル設定もできますが、床下のスペースがなくなると、それはそれで長期優良住宅が認定されなかったりもします。明確な理由もなく床レベルを下げるとかはお勧めできません。昨今、補助金を受けるにも長期優良住宅がだいたい効率がいいので、地盤面から基礎の高さが40cmくらいがスタンダードではありますね。
なかなか高さの目途がわからない床レベル。気になったら設計士さんに確かめてみましょう。